『白癬』の原因・症状・治療法【症例画像】

白癬とは

  • 白癬とは、皮膚糸状菌というカビ(真菌)が皮膚に寄生することで起こる感染症です。そのため皮膚糸状菌を白癬菌と呼ぶことがありますが、白癬をおこすカビは皮膚糸状菌の一部です。
  • 白癬菌は皮膚の角質層に多く含まれるケラチンというたんぱく質を栄養源に増殖するため、粘膜部分を除く全身の皮膚または毛、爪などに発生します(毛や爪は皮膚の角層が変化したもの)。
  • 白癬菌に感染すると、皮膚が赤くなったり、痒くなることがありますが、足に感染すると足白癬(水虫)と言われ、白くふやける、小さな水疱や皮むけが起こるなどの症状が出ます。

白癬菌とは

  • 足に生ずる白癬を「水虫」といい、水虫の原因となる白癬菌は、ジメジメとした高温多湿な環境で増殖するため、靴下で蒸れやすい足の裏や指の角質層に発生しやすく、白癬の半数以上を足白癬(水虫)が占めています。
  • 白癬菌は、患部からぽろぽろと剥がれ落ちた皮膚片(鱗屑:りんせつ)の中に潜んでいるため、公衆浴場やスポーツ施設、家庭内のスリッパ・バスマットなどを介して、他の人の皮膚に付着し、感染します。
  • 白癬菌は人間だけではなく、犬や猫などの動物に感染するため、白癬に罹患した動物と接触することで人間の顔や手腕、髪の毛などに感染するケースもあります。

白癬の種類と症状

  • 白癬は発生する部位別に分類されており、それぞれ異なる名称で呼ばれます。

足白癬(水虫)

ジュクジュクの足白癬(水虫)

カサカサの足白癬(水虫)


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足にできる白癬で、いわゆる「水虫」と呼ばれるものです。足白癬(水虫)の症状の出かたには主に次のような3つのパターンがあり、2つ以上のパターンの症状が混在することも珍しくありません。

●趾間型(しかんがた)…足の指の間に症状が出ます。症状は、赤みや小さな水疱ができ、やがて皮膚がふやけたように白くなり、ぽろぽろと剥がれ落ちるようになります。かゆみを伴うこともあり、ジュクジュクすることもあります。足白癬(水虫)の中で最も多いタイプです。高温多湿な季節に悪化する傾向があります。

●小水疱型(しょうすいほうがた)…足の裏に小さな水疱ができ、やがて皮がむけます。痒みを伴うこともあります。梅雨から秋口にかけて症状が悪化しやすく、秋以降に軽快する傾向があります。

●角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)…足の裏全体が多少赤味を帯び、硬くなる非常に稀な病型です。皮膚が分厚く・硬くなり、ひび割れをしたり、白く乾燥し、皮膚がむけたりします。かゆみを伴わないため、足白癬(水虫)と気づかないケースもあります。冬場は角質化した部分がひび割れて痛みが出ることがあります。


 

手白癬

手白癬


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手にできる白癬のことです。手のひらにかゆみのある小さな水疱ができ、皮がむけることもありますが、皮膚が分厚くなることが多いです。手だけに白癬を発症することは稀で、たいてい足の白癬を掻くことによって、手にうつって発症するケースがほとんどです。

爪白癬

爪の水虫(爪白癬)


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爪にできる白癬です。爪の先端あるいは爪の脇から進行することが多く、爪は白~黄色に濁ってきます。進行すると爪自体が分厚く変形します。加齢とともに発症率が高くなる傾向があります。

体部白癬

体部白癬

体部白癬


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俗称は「ゼニタムシ」。体幹部や脚、腕などにできた赤いブツブツが、かゆみを伴ってリング状に広がって、リングの中は治っているようにみえるのが特徴です。犬・猫からの感染や、白癬となった格闘技選手の接触でうつることがあります。

股部白癬

俗称は「インキンタムシ」。陰部を中心に、強いかゆみを伴いながらリング状の紅斑が広がります。

頭部白癬

頭皮の水虫(頭部白癬)


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俗称は「しらくも」。白癬菌が髪の毛に寄生して発症します。戦前は子どもによくみられた病気ですが、現在はほとんどみられません。感染部位の毛髪が抜け落ち、フケのような皮膚片がたくさん見られることもあります。

白癬と似た症状の疾患

  • 白癬とは異なる病気で、似たような症状を持つ皮膚疾患がいくつかあります。

汗疱(かんぽう)

手指や手のひら、足底に突然1~2mm大の透明で小さな水ぶくれ(小水疱)ができます。多くは原因不明ですが、金属による全身性接触皮膚炎という一種のアレルギー反応が関係しているケースもあります。感染性はありません。数カ月で自然に治りますが、再発を繰り返すことが多いです。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に、透明あるいは濁った水疱がくり返しできる病気です。詳しい原因が解明されていませんが、喫煙や金属アレルギーが関与しているケースがあります。感染性はありません。

皮膚カンジダ症

主に陰部の粘膜から皮膚にかけて、カンジダというカビが寄生することによって起こる感染症です。軽いかゆみのあるジュクジュクした紅斑が広がります。

疥癬(かいせん)

ヒゼンダニというダニが皮膚の角質層に寄生して起こる感染症です。強いかゆみを伴って、赤いブツブツや水膨れができることもあります。足の裏に水膨れができると足白癬(水虫)と紛らわしいです。

白癬の治療法

  • 白癬の種類によって治療法は異なります。通常、足白癬(水虫)、股部白癬(インキンタムシ)、体部白癬(ゼニタムシ)では、抗真菌剤を含んだ外用薬を塗って治療します。これらは市販のOTC医薬品を使ってセルフケアできる場合もあります。
  • 爪白癬、頭部白癬や多くの手白癬は、市販のOTC医薬品では対処できません。内服や医療機関専用の塗り薬での治療が必要ですので皮膚科を受診してください。また、足白癬(水虫)であっても、角質増殖型は、外用薬だけでは治療できません。治療期間も数カ月単位で長くかかるケースも多いため、病院を受診し、医師による治療をうけましょう。
  • 白癬は他の皮膚疾患との見分けが難しく、正しい治療をしなければ悪化して病気が進行する恐れがあるため基本的には病院を受診し、直接鏡検という検査を受けて、診断を確かめてください。

白癬の予防法

  • 白癬を予防するためには、清潔な環境を保つことが大切です。なるべく白癬菌に接触しないように、付着しても丁寧に洗い流し、白癬菌が好むジメジメした状態にならないようにしっかりと乾かすようにしましょう。
  • 白癬は、患者との直接的な接触や履物・バスマットなどを介して、健康な皮膚に白癬菌が付着して感染します。できる限り、共用しないようにしましょう。
  • 例えば、公共のプールや温泉、スポーツジム、フィットネスクラブの更衣室などでは、多くの人が裸足で歩いたり、スリッパ・マット類を共用したりすることがあるため、白癬菌が存在します。そのような場所を利用した後は、石鹸やボディーソープで足の裏、足の指の間などをよく洗って、皮膚に付着した白癬菌を洗い流しましょう。ただしゴシゴシ洗いをすると、皮膚に傷をつけ、かえって白癬にかかりやすくなります。
  • 万が一、白癬菌が付着しても、すぐに感染するわけではありませんので、軽く洗い流せば、大丈夫です。1日1回の入浴などで身体を清潔にしていれば、感染を予防することができます。
  • 日々の入浴では、足の指の間や全身を軽く洗い流すようにしましょう。また、入浴後は速やかに水気を取り除き、身体や毛髪をよく乾かしましょう。
  • 夏場は特に、靴の中が蒸れやすくなります。そのままにすると白癬菌が繁殖しやすいため、通気性の良い靴下を選んだり、サンダルなどを履いたりして、蒸れないように工夫しましょう。
  • 足白癬(水虫)はほとんどが家庭内感染ですので、同居人の足白癬(水虫)を治すとともに、家庭内に存在する白癬菌を掃除などで取り除くことが大切です。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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