『毛嚢炎(毛包炎)』の症状・治療法【症例画像】

毛嚢炎(毛包炎)とは

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  • 毛嚢炎(もうのうえん)とは皮膚感染症の一種で、「毛包炎(もうほうえん)」とも呼ばれます。
  • 毛穴のある部分に一致して、赤いブツブツ(丘疹:きゅうしん)や、白色、赤色、暗褐色などの膿を持ち、赤みを帯びたブツブツ(膿疱:のうほう)ができます。
  • 毛穴から細菌類が入り込み、毛の浅い部分の感染症を「毛嚢炎」、毛の深い部分の感染症は「癤(せつ)」と呼びます。せつになると毛包全体に炎症が広がり、患部がはれてしこり(硬結:こうけつ)ができ、ズキズキとした痛みや熱感を伴います。これが通称「おでき」と呼ばれるものです。
  • 毛嚢炎のほとんどは、数日で自然に治癒しますが、せつのように皮膚の深部まで炎症が達した場合や何度も毛嚢炎を繰り返した場合は、色素沈着や皮膚の凹凸などの痕が残ることがあります。

毛嚢炎(毛包炎)の症状

  • 毛穴に一致した赤い丘疹ができたり、真ん中に 膿疱を伴う赤い盛り上がりができたりします。
  • かゆみはほとんどなく、圧痛(圧迫すると痛みを感じる)を伴うことがあります。
  • 毛嚢炎は、毛が生えているところであればどこでも起き、首の後ろ、おしりや陰部付近などに見られます。
  • 毛嚢炎は一つだけできることもあれば、大小複数のブツブツが同時に出現することもありますが(同時に多発することは稀)、通常は自然によくなります。
  • せつは進行すると、しこりのあった部分に膿の溜まった空洞(皮膚膿瘍:ひふのうよう)ができることがあります。
  • 皮膚膿瘍が破れて中の膿を自然に排出できれば、症状は軽快していきます。ただし、毛嚢の奥深くまで炎症が達したことにより、治癒後も皮膚に色素沈着や凹凸のある傷痕が残ります。
  • 周囲の別の毛包にまで炎症が拡大したものを「よう」といいます。ようになると患部の強い痛みや全身の倦怠感、発熱などを伴うことがあります。現在、ようは非常に稀な疾患ですが、糖尿病に罹患しているとなることがあります。

毛嚢炎(毛包炎)の原因

  • 毛嚢炎は皮膚表面にできた小さな傷口から、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの細菌類が、皮膚の内部に侵入し、毛嚢内で増殖することで発症します。
  • 例えば、髭剃りやムダ毛の処理によって表皮にできた傷や、掻きむしるなどの行為をきっかけに表皮にできた傷から細菌類が侵入し、毛嚢炎を発症するようなケースがよく見られます。
  • 黄色ブドウ球菌は、鼻の周辺に生息している場合があります。鼻に触った手で、身体のほかの部位を掻くことで黄色ブドウ球菌が皮膚に侵入し、毛嚢炎を引き起こすことがあります。
  • 毛嚢炎の中には、マラセチアという真菌(カビ)の一種によって引き起こされるものもあり、これを「マラセチア毛嚢炎(毛包炎)」といいます。

毛嚢炎(毛包炎)とニキビ(尋常性ざ瘡)の違い

  • 毛嚢炎の見た目は、ニキビに似ている場合もありますが、毛嚢炎とニキビは原因となる細菌が異なります。ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡」といい、毛嚢炎の一種ではありますが、健全な毛嚢内にもいる「アクネ菌」の異常繁殖が原因で起こります。
  • ニキビは毛に付着している脂腺の炎症なので、見た目では毛嚢炎と区別できません。
  • 見た目以外で区別する方法は、ニキビは生ずる部位が顔や前胸部、上背部に限られ、また皮疹が多発しているかどうかです。それ以外にもニキビは思春期に生ずるので、発症時期でも区別は可能です。発症する部位、単発か多発か、年齢からニキビか毛嚢炎かを区別します。また、毛嚢炎よりはニキビの方が発症の頻度が高いです。

毛嚢炎(毛包炎)の治療法

  • 軽度の毛嚢炎であれば、皮膚を清潔に保つように心がけることでたいてい自然に軽快します。
  • ブツブツが気になるからといって、何度も触ったり、引っかいたり、潰したりするのは厳禁です。炎症が広がって化膿したり、色素沈着や皮膚の凹凸などの痕が残ったりすることがあるので、患部を刺激しないようにしましょう。
  • 赤みや痛みなどの症状が気になる時は、抗菌成分を含んだ市販の外用剤を塗って治療します。
  • 毛嚢炎が多数できている時や、市販のOTC医薬品を使用してもなかなか症状が治まらない時、悪化している時は皮膚科を受診してください。
  • 医療機関では、毛嚢炎の原因菌に合った抗菌薬の外用療法や内服療法を行います。
  • せつ、ように進行し、皮膚の深いところに膿が溜まって痛みが強い場合は、外科的に切開して膿を排出することもありますので、医療機関での治療が必要です。

毛嚢炎(毛包炎)の予防法

  • 毛嚢炎を予防するには、皮膚を清潔に保つことが大切です。日々の入浴や洗顔で皮膚についた汚れ・余分な皮脂を洗い流しましょう。
  • 洗浄力の強いボディソープを使って洗ったり、ゴシゴシとタオルで強くこすったりすると、皮膚を外敵から守る「バリア機能」に必要な皮脂や角質を除去してしまいます。さらに、堅いボディタオルやボディスクラブ剤の使用は皮膚への負担が大きく、表皮が傷つく原因にもなるため、洗い過ぎには注意が必要です。ボディソープや石鹸は、適度な洗浄力のものを選び、泡で包むようにやさしく洗いましょう。
  • 入浴や洗顔後の保湿ケアをする場合は、脂性肌(ニキビ肌)用の化粧水やローションで保湿します。軟膏やクリームは毛穴を詰まらせ毛包炎やニキビの悪化要因になりますので、使用は避けましょう。
  • 髭剃りやムダ毛処理の際は、表皮を傷つけないように慎重に行いましょう。
  • 衣服は肌触りのよい素材で、皮膚への摩擦や締め付けの少ないものを選び、皮膚へのストレスを軽減してください。
  • 汗をかきやすい夏場やスポーツの後は、清潔な濡れタオルで汗をやさしく拭き取り、清潔な衣服に着替えるようにしましょう。
  • その他、基本的な生活習慣を見直しましょう。規則正しい睡眠リズムとバランスの取れた食事習慣が大切です。普段の生活から身体の抵抗力を高めましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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