『頭皮の湿疹』は何が原因?頭皮トラブルの治療・ケア方法


毎日シャンプーをしているのに、すぐに頭皮がかゆくなる、赤みやブツブツが出るといった頭皮の湿疹に悩む人も多いのではないでしょうか。不快な頭皮のトラブルを解消したいけれど、対処法がわからず困っているという人もいるかもしれません。

今回は、頭皮にできる湿疹「頭皮湿疹」の原因や治療法、頭皮トラブルのケア方法などを解説します。

頭皮湿疹とは

一般的にいわれている「頭皮湿疹」とは、頭皮に湿疹症状が出ている状態を指す俗称です。「湿疹」とは、皮膚の表層(表皮や真皮上層)に起こる炎症の総称で、「皮膚炎」とも呼びます。

湿疹の代表的な症状は、かゆみ、赤み(紅斑:こうはん)、ブツブツ(丘疹:きゅうしん)、水ぶくれ(水疱:すいほう)などがあります。症状の経過とともに、患部がただれて潰瘍になったり、かさぶた(痂疲:かひ)ができたり、皮膚片がポロポロと落ちるいわゆるフケ(落屑:らくせつ)などの症状が出ることがあります。

「頭皮湿疹」は、何らかの原因によって、これらの湿疹症状が頭皮に出現している状態です。そもそも、健康な頭皮は毛根の色が透けるように青白くみえ、かゆみなどの不快な症状も感じないものです。しかし、頭皮の色が赤っぽく見えたり、ムズムズしたかゆみを感じたりする場合は、頭皮に何らかのトラブル(皮膚炎)が生じているサインです。

頭皮湿疹の原因となる疾患

頭皮に湿疹ができる背景には、さまざまな疾患が関係しています。頭皮の湿疹の原因になりやすい代表的な皮膚疾患としては、以下のようなものがあります。

脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹:しろうせいひふえん/しろうせいしっしん)

頭皮や生え際など、皮脂の分泌が盛んな部位にできる湿疹です。脂漏性皮膚炎になると、頭皮は赤くなり、やや黄色味を帯びた湿り気があるフケまたは乾燥した鱗状のフケが出るのが特徴です。

ひどいとフケが固まって、かさぶたのようになることもあります。皮膚に常在しているマラセチアというカビ(真菌)の一種が、皮脂を栄養として異常繁殖することで、皮膚に炎症が起きると考えられています。根本的な原因はいまだわかっていませんが、環境による皮脂成分・分泌量の乱れ、ビタミンB2、B6などの欠乏による代謝異常のほか、ストレス、寝不足、ホルモンの乱れなどが発症に関係しているとされています。

接触皮膚炎(せっしょくひふえん)

いわゆる「かぶれ」のことです。シャンプーやヘアケア製品に含まれる薬剤や、ヘアアクセサリー・毛染め用染料に含まれる金属などによる刺激に皮膚が負けて、炎症が起きます。原因物質に触れていた箇所だけにくっきりと症状が出現するのが特徴です。

接触皮膚炎には、原因物質の刺激によって、誰にでも起きる「刺激性接触皮膚炎」と、アレルギー体質が関係する「アレルギー性接触皮膚炎」があります。

アトピー性皮膚炎

強いかゆみを伴うジュクジュクした湿疹が繰り返し現れる病気です。症状は左右対称に出るのが基本的な特徴で、症状が良くなったり、悪くなったりを何度も繰り返して慢性化します。

アトピー性皮膚炎を発症する患者さんの多くは、アトピー素因といって、アトピーやアレルギー疾患の既往歴・家族歴などを持っているといわれています。アトピー性皮膚炎の多くは、思春期~成人になれば自然に治っていきますが、ごく一部は成人以降も症状が出ることがあります。稀に、成人になってから発症することもあります。

皮脂欠乏性皮膚炎(ひしけつぼうせいひふえん)

皮膚が乾燥して皮膚のバリア機能が障害され、かゆみを感じるようになります。皮膚をかき続けることで炎症が起きます。生まれつき皮脂の分泌が少ない、あるいはシャンプーのし過ぎや間違ったヘアケア習慣によって頭皮から水分が失われて発症します。秋から冬にかけて、空気が乾燥する季節に悪化しやすい病気です。

頭皮湿疹の治療法

頭皮に出る湿疹の治療法はその原因となる疾患によって異なります。湿疹の原因を明らかにし、それぞれの原因にあった治療を行います。

脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)

脂漏性皮膚炎によって頭皮にトラブルが生じている場合は、まず適切な洗髪によって患部を清潔に保つことが大切です。皮膚科では、ステロイド外用剤を使って炎症を抑える治療を行いますが、原因菌であるマラセチアというカビの繁殖を抑える抗真菌外用剤を併用することもあります。

接触皮膚炎

接触皮膚炎の原因となる薬剤や物質がわかっている場合には、まずそれらを避け、皮膚に触れないようにし、かぶれによる炎症を起こさないことが大切です。赤み・かゆみ・ブツブツなどの皮膚症状に対しては、充分な強さのステロイド外用剤を塗って、炎症を抑える治療をします。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の場合は、頭皮以外にもひじやひざの裏に左右対称に湿疹があることが多いです。この場合、皮膚科専門医による診断と治療が必要です。医療機関を受診し、医師の指導に従って治療しましょう。基本的には、患部に充分な強さのステロイド外用剤を塗って治療をします。

皮脂欠乏性皮膚炎

皮膚の乾燥が主たる原因なので、初期の皮脂欠乏症に対しては、保湿剤を塗って対処します。乾燥が進み、強いかゆみやブツブツが出ている場合は、保湿剤を塗るだけでは不充分なので、充分な強さのステロイド外用剤を塗り、かゆみの元となる炎症をしっかりと抑えて治療する必要があります。



頭皮湿疹で市販のステロイド外用剤を使用する際の注意点

頭皮にできる湿疹の中でも、接触皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎の場合は、市販のステロイド外用剤を使ってセルフケアをすることができます。市販のステロイド外用剤を使用する際の選び方、使い方、注意点を解説します。

ステロイド外用剤のランクの選び方

市販のステロイド外用剤を用いる場合は、中学生以上であれば「ストロング」ランク、子どもは「マイルド」ランク、赤ちゃんは「ウィーク」ランクのステロイド外用剤を選びましょう。赤ちゃんや子どもの皮膚はバリア機能が未熟なため、年齢にあった強さのランクを選び、1週間以上は続けて使用しないでください。

ステロイド外用剤の剤形には、軟膏タイプ、クリームタイプなどいくつかの種類がありますが、頭皮に塗る場合は、べたつきにくい使い心地のローションタイプを選ぶのもよいでしょう。好みに合わせて、使いやすい剤形を選びましょう。

ステロイド外用剤の使い方

軽度の接触皮膚炎あるいは皮脂欠乏性皮膚炎であれば、ステロイド外用剤による治療を行うことで、たいてい数日で良くなります。ステロイド外用剤は、かゆみや赤み、ブツブツなどの炎症が出ている部位にのみ塗布し、症状のない部位に塗ったり、予防で使用したりするのは避けてください。

ステロイド外用剤を使用する際の注意点

ステロイド外用剤を5~6日間使用しても症状が改善しない時や、悪化している時は使用を中止し、医療機関を受診しましょう。また、症状の範囲が手のひら2~3枚分を超える場合も、セルフメディケーションの範疇を超えています。自分で治療することはできないので、医療機関を受診してください。

皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。-...
1970.01.01
皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。-ヒフノコトサイト|田辺三菱製薬株式会社
https://www.hifunokoto.jp/selfmedication/1752
皮ふトラブル、正しく知ってしっかり治す。

頭皮湿疹で病院に行く目安

頭皮の湿疹には、さまざまな原因疾患が関わっています。それぞれに適切な治療を行わないと、症状が悪化する場合もあります。頭皮の湿疹に対し、市販のステロイド外用剤を5~6日間使用しても症状が改善しない時や、悪化している時は使用を中止し、医療機関を受診しましょう。

その他、掻くことをがまんできないほどの強いかゆみがある時や、症状が広範囲に及んでいる時、症状が長引いている時、頭皮以外の全身にも皮膚症状がでている時、原因疾患がはっきりとわからない時などは、自己判断せず、皮膚科を受診し、医師の診断と治療を受けましょう。

頭皮湿疹の日常のケア方法

頭皮に湿疹が出ている時、あるいは頭皮の湿疹を予防したい時は、日常的なヘアケア習慣と生活習慣を見直すことが大切です。頭皮の健康を保つためのポイントを解説します。

正しいヘアケア習慣

頭皮の健康のためには、正しいヘアケアを行うことが大切です。毎日かならずシャンプーをして、頭髪を清潔に保ちましょう。接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎の場合は、皮膚が乾燥しやすく、デリケートな状態になっています。低刺激性のシャンプーを使用し、泡で優しく包むようにして髪と頭皮を洗いましょう。

一方、皮脂の過剰分泌を伴う脂漏性皮膚炎の場合は、適度な洗浄力のあるシャンプーを使って、しっかりと皮脂汚れを落とし、頭皮を清潔に保ちましょう。ただし、洗いすぎ、こすりすぎは頭皮を傷つけ、症状を悪化させることがあるため、注意しましょう。洗浄成分の洗い残しがないように、しっかりすすぎましょう。シャンプーのあと、乾燥が気になる場合は、頭皮用のローションなどを使って保湿をすることが大切です。

生活習慣の見直し

頭皮を健康に保つためには、生活習慣を見直すことも大切です。過度なストレスや睡眠不足、不規則な食生活などは、ホルモンの分泌や皮脂の分泌のバランスを乱し、皮膚トラブルを引き起こすきっかけになるといわれています。ストレスを溜めすぎないよう、運動や趣味の活動などでリフレッシュする時間を意識的に作ったり、正しい睡眠習慣や食習慣を身につけたりするように心がけましょう。

監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長

山田貴博 先生

2010年名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院(現・第二大阪警察病院)にて初期臨床研修後、大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座助教として基礎医学研究に従事。阪南中央病院皮膚科勤務を経て、2017年天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

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