『しもやけ(凍瘡)』の原因・症状・治療法【症例画像】

しもやけ(凍瘡)とは

腫れあがった手指

しもやけの症例画像


症例画像を鮮明にする

※ボタンを押下することで症例画像が切り替わります。

しもやけとは、寒さによる血行障害によって起きる皮膚病です。医学的には「凍瘡(とうそう)」と言い、一般的には「しもばれ(霜腫れ)」「しもくち(霜朽ち)」とも呼ばれます。寒暖差が激しい環境に長くいると毛細血管の血流が悪くなり、手先や足先、頬、耳などが赤紫色になり、腫れあがります。強いかゆみやジンジンとした痛みを伴い、入浴や暖房などの温熱刺激によってかゆみが強くなる特徴があります。ひどい場合は、水ぶくれや潰瘍ができます。また、子どもに多い皮膚病ですが、大人が発症することもあります。

しもやけ(凍瘡)の原因

しもやけは、急激な温度差刺激により、身体の末端の血流が異常をきたすことで発症する病気です。1日をとおして気温の低い厳冬よりも、晩秋から冬のはじめや春先など、寒暖差の激しい季節に起こりやすいと言われています。特に1日の気温差が10℃以上になる時期に発症しやすくなります。ただ暖房設備の充実や、衣類の防寒機能の向上など、生活環境の改善によって現代ではあまりみられない病気です。

私たちの身体は、寒い環境にいる時は手足の血管を収縮させて体温を保持し、暖かい環境にいる時は手足の血管を拡張して熱を逃がすようにして、体温を調節しています。ところが、寒暖差による刺激を受け続け、血管の収縮・拡張が繰り返されるうちに血液が正常に流れなくなり、皮膚に炎症が起きます。

手足を濡らした状態で過ごしたり、汗をかいて蒸れた靴下や手袋をつけたままにしていたりすると、水分の蒸発に伴って皮膚が急に冷やされ、しもやけを発症することもあります。また、同じ環境にいても、しもやけを発症する人と、しない人がいて、遺伝的な要因も関係していると考えられています。

しもやけ(凍瘡)の症状

しもやけになりやすいのは、手指・足指・頬・耳など、毛細血管が多く、外気にさらされて冷えやすい末端部分です。
症状のでやすい場所として、手や足の指、特に関節周りを示した図
症状の出かたには、2つのタイプがあります。

1.「樽柿型(たるがきがた)」
指や手全体が熟れた柿のように赤く腫れあがるタイプ。子どもによくみられます。

2.「多型滲出性紅斑型(たけいしんしゅつせいこうはんがた)」
指や手全体に赤いブツブツやむくみ、水ぶくれなどがたくさんできるタイプ。子どもよりも大人にみられます。

しもやけに似た症状は、ひびやあかぎれ、凍傷(とうしょう)によってもみられることがありますが、しもやけとは発症メカニズムが全く異なります。ひびやあかぎれは、肌のひどい乾燥によって、皮膚のバリア機能が低下することで起きる肌トラブルであり、一方、凍傷は氷点下になるような状況のなかで、皮膚の組織が凍って壊死(皮膚や筋肉などの組織の一部が死んで黒色や暗褐色に変色する状態)する病気です。そのほか、洗剤や薬品による接触皮膚炎(かぶれ)をしもやけと混同している場合もあります。

しもやけの症状を何度も繰り返す場合や、季節を問わず症状が出ている場合は、別の病気が関係していることもあります。特に女性の場合、ごく稀に膠原病によってしもやけのような症状が出るケースもあるため、「あれ、おかしいな」と思ったら、医療機関を受診しましょう。

しもやけ(凍瘡)と凍傷の違い

しもやけと似た呼び名の疾患に「凍傷(とうしょう)」があります。いずれも、寒さにさらされることで起こるものですが、しもやけと凍傷は全く異なる疾患です。しもやけは、晩秋から冬のはじめや春先など、激しい寒暖刺激によって身体の末端の血管が収縮を繰り返すことで血流が異常をきたし、発症する病気です。

一方、凍傷は、雪山やスキー場、雪山登山など氷点下の環境下に長時間さらされることで、身体の組織自体が凍結してしまい、血行が途絶えることで起こる病気です。凍傷は手足の指や耳、鼻、頬など身体の末端に発症しやすく、ひどいと水疱(水ぶくれ)ができる場合や、重症例では組織の障害が筋肉や骨、神経にまで達し、壊死に至る場合など、重篤な状態に陥ることもあります。

しもやけ(凍瘡)に似た症状が見られる疾患

凍傷のほかにも、しもやけに似た症状が見られる疾患がいくつかあります。次に、しもやけと似た症状を持つ疾患について解説します。

あかぎれ

手指の皮膚が乾燥して弾力性を失うことで、皮膚の真皮まで到達する線状の切れ目(亀裂)が入る症状のことです。出血やひどい赤み・痛みを伴います。空気が乾燥する冬場に多い皮膚トラブルではありますが、冬以外の季節でも、洗浄力の強い洗剤やシャンプー、アルコール消毒液に繰り返し触れる習慣のある人は、皮膚のバリア機能が障害され、皮膚の乾燥が進むことで、季節を問わず発症する可能性があります。亀裂が目立たないものは手湿疹と呼ばれます。

接触皮膚炎

いわゆる「かぶれ」のことです。薬剤、金属、植物の刺激に肌が負けて、かゆみや赤み、ブツブツ、水ぶくれなどの皮膚症状が起きます。原因となる物質に触れていた箇所だけにくっきりと症状が出るのが特徴です。原因物質の刺激によって、誰にでも起きる「刺激性接触皮膚炎」と、アレルギー体質が関係する「アレルギー性接触皮膚炎」があります。

手湿疹

手指にできるブツブツ・赤みなどの湿疹や炎症の総称です。いわゆる「手荒れ」がさらに進行した状態と考えられており、赤みやかゆみ、小さなブツブツなど、いくつかの症状が混ざり合って発症することがほとんどです。悪化すると、皮膚が極度に乾燥して亀裂やひび割れを生じたり、ブツブツや水疱が生じて患部がジュクジュクしたりといった症状に移行します。手の甲や関節周囲に発症し、腫れを伴うこともあります。職業柄、化学物質を含む洗剤や水に触れる機会が多い美容師や調理師、また炊事や洗濯など水仕事の多い主婦などによく見られます。

手白癬

白癬とはいわゆる「水虫」のことです。皮膚糸状菌の一種である白癬菌というカビ(真菌)が手指の皮膚に寄生することで起こる感染症です。手のひらや指にかゆみのある小さな水疱がたくさんできたり、皮膚が分厚くなったりして、次第に皮がむけるようになります。たいてい足の水虫(足白癬)を掻くことによって、手にうつって発症するケースがほとんどです。足の水虫と比べると稀で、なかなか治らない人も多いです。病院での診断と治療が必要です。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスは膠原病の一種です。免疫系の働きに何らかの異常が起き、全身や皮膚の組織などに様々な症状があらわれます。全身性エリテマトーデスの皮膚症状の中には、一見しもやけと似たような症状があらわれることがあります。20~40代の女性に多いと言われています。病院での診断と治療が必要です。

しもやけ(凍瘡)の治療法

かゆみや痛み、腫れなどの炎症症状に対しては、ステロイド外用剤を塗って治療します。血流障害に対しては、血管拡張作用のあるビタミンEの外用剤を塗ったり、患部を保温しながらマッサージを行ったりして、血液の流れを改善します。毎年、しもやけを発症しているなど治りにくい時は、医療機関での内服治療を受けることも可能です。

しもやけ(凍瘡)にステロイド外用剤を使用する際の注意点

しもやけは市販のステロイド外用剤を使ってセルフケアすることもできます。市販のステロイド外用剤を使って治療する場合は、年齢に合った強さのステロイド外用剤を選びましょう。中学生以上なら「ストロング」ランクを、お子様や赤ちゃんは年齢に応じて「マイルド」ランクや「ウィーク」ランクを使い分けましょう。

しもやけにステロイド外用剤を使用する際は、かゆみ、赤み、腫れなどの炎症が出ている部位にだけ塗るようにしてください。ステロイド外用剤は、1日1~数回、患部に塗布します。患部に塗る時は適量を指に取り、擦り込まずにやさしく患部に塗りましょう。ちなみに、ステロイド外用剤の適量は、経口5mmのチューブから大人の人差し指の第一関節の長さに押し出した量(約0.5g)で、大人の手のひら約2枚分の範囲に塗るのが目安です。この目安を基準に、実際の患部の広さに合わせて一回当たりの使用量を決めましょう。

ただし、ステロイド外用剤を5~6日使用しても症状が改善しない、または悪化している時は、医療機関を受診しましょう。また、症状の範囲が手のひら2枚分を越える時は、セルフメディケーションの範疇を越えています。自分で治療することはできないので、医師の診断と治療を受けましょう。我慢できないような強いかゆみや痛み、腫れなどがある時は、自己判断せず、医師に相談しましょう。

しもやけ(凍瘡)の予防法

しもやけは、予防が最も大切です。寒い時期の外出時は、厚手の手袋や靴下、マスク、帽子などの防寒具を活用し、寒冷刺激から身を守りましょう。身体が冷えた時は、早めにカイロで温めたり、衣服を調節したりして、保温を心がけましょう。

治療法でも記載した、保温しながらのマッサージは、しもやけの予防法としても有効です。ビタミンEを含む保湿クリームを使って、マッサージするとよいでしょう。また、手足が濡れたまま放置すると、しもやけを発症しやすくなります。濡れたらその都度水分をふき取る、衣服を取り換えるなどの対策をしましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

おすすめ記事

\正しく知ってしっかり治すセルフメディケーション/

他の症状を探す

他の症状を探す場合はこちらから

症状一覧ページへ