『乾燥肌』が『かゆみ』の原因に?かゆみ対策と適切なスキンケア方法をご紹介

「虫刺されや湿疹はないのに、皮膚がムズムズ・ピリピリしてかゆみを感じる」「季節の変わり目になると、皮膚がかゆくなる」など、皮膚のかゆみに関する悩みがあるという人も多いのではないでしょうか。

私たちにとって身近な皮膚トラブルの一つである「皮膚のかゆみ」の多くには、乾燥肌が関係しています。今回は、皮膚のかゆみと乾燥肌の関係や、不快なかゆみを抑えるための対策、日々のスキンケア方法を解説します。

乾燥肌とは

ドライスキンの症例画像

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乾燥肌とは、皮膚の皮脂や水分が不足して皮膚が乾燥している状態のことで、「ドライスキン」とも呼ばれます。医学的には「乾皮症(かんぴしょう)」と呼びます。

健康な皮膚は、皮脂膜でコーティングされた角層(角質層)がバリアとして働くことで、皮膚の内部の水分を外に逃がさないようにし、適度な潤いと滑らかさを保っています。この働きを「皮膚のバリア機能」といい、皮膚を乾燥から守り、みずみずしく保つとともに、微生物やアレルゲンなどの異物が皮膚の中に侵入するのを防ぐ役割を担っています。

ところが、皮膚のターンオーバーの乱れ、紫外線、加齢、誤ったスキンケアの影響、洗いすぎによる皮脂の欠乏、乾燥といった刺激を受けると、皮脂膜によるコーティングが剝がれ落ち、角層に隙間ができてバリア機能が低下します。バリア機能が低下すると、皮膚内部の水分が外に逃げ出してしまい、カサカサした状態の「乾燥肌」になります。

乾燥肌は誰でもなる可能性があり、皮膚が薄い乳幼児や、皮脂の分泌が低下している高齢者の場合は特に起こりやすい皮膚トラブルです。また、アトピー性皮膚炎を持つ人は、皮膚のバリア機能が低下しやすく、乾燥肌になりやすいと言われています。

乾燥肌によるかゆみの原因

乾燥肌の状態では、皮膚のバリア機能が低下することによって、衣服によるこすれなどの物理的刺激が皮膚の内部にまでダイレクトに伝わるようになります。すると、本来皮膚の奥に存在しているかゆみの知覚神経が刺激されて皮膚の表面近くまで伸びてくるようになり、これによって知覚神経が過敏になり、乾燥した外気や衣服のこすれなどの僅かな刺激でもかゆみを感じやすくなるのです。

例えば、健康な皮膚では何とも感じなかったような、衣服や寝具の繊維や、乾燥した空気に触れるだけで、ピリピリ・ムズムズするようなかゆみを覚えるようになります。

皮膚の健康にとって欠かせない皮膚のバリア機能は、日常生活に潜む以下のような要因によって低下することが分かっています。

皮膚のターンオーバーの乱れ

健康な皮膚は、新しい細胞へとターンオーバー(生まれ変わり)を繰り返すことでバリア機能を維持しています。しかし、不規則な生活やストレスによってターンオーバーのリズムが乱れると、正常なバリア機能が維持できなくなります。

紫外線の影響

紫外線を浴びることによって皮膚表面の角層がダメージを受け、バリア機能が低下します。

誤ったスキンケア

タオルによる過剰な摩擦刺激や洗浄成分による洗いすぎによって、バリア機能が低下します。

炊事・洗濯

強力な洗浄剤の使用によって皮脂が流されてしまい、バリア機能が低下します。

加齢

年齢を重ねると、皮脂や潤い成分(NMF「天然保湿因子」)が失われ、バリア機能が低下しやすくなります。

エアコンや外気による乾燥

エアコンの風や冬場の乾燥した外気にさらされることによって、皮膚表面の乾燥が進み、バリア機能が低下しやすくなります。

日常生活の中で、バリア機能を低下させる原因として思い当たるものはないでしょうか。もし心当たりがあるようであれば、生活習慣の見直しや正しいスキンケアによって乾燥肌を改善できる可能性があります。

かゆみが強い時の対処法

皮膚にかゆみを感じると、つい掻きむしりたくなります。しかし、掻いてしまうと、掻いたことによって皮膚の知覚神経をさらに刺激し、かゆみが増してしまう「かゆみの悪循環」に陥ってしまいます。

「掻いたら、掻く前よりもさらにかゆみが増した」という経験は誰しもあるのではないでしょうか。また、かゆいところを掻きむしることによって、角層が傷ついてバリア機能が低下し、さらなる乾燥肌を招いたり、細菌感染のリスクにもなったりします。

かゆみが強い時は、クリームやワセリンなどの保湿剤を塗って皮膚を保護し、かゆみを落ち着かせましょう。一時的にかゆい部分に冷たい濡れタオルや冷水をあてるなどして、かゆみを鎮めるのも有効です。

通常、乾燥肌に伴うかゆみは、保湿剤による保湿を続けることでかゆみ症状が改善します。しかし、掻くことを我慢できないような強いかゆみ、痛み、赤み、湿疹などの症状を伴う場合は、乾燥だけでなく炎症が起きている状態です。ステロイド外用剤を塗って、かゆみ・赤みの元である炎症をしっかりと抑えてから、保湿を行いましょう。

ただし、かゆみ・赤みなどの症状が手のひら2~3枚分を超える広範囲の場合は、OTC医薬品を使って自分で治療することはできないため、医師に相談しましょう。そのほか、ステロイド外用剤を5~6日間使用しても症状が改善しない場合や悪化している場合、同じような症状を何度も繰り返すといった場合も、医療機関を受診してください。

乾燥肌によるかゆみ予防とスキンケア

乾燥肌によるかゆみ予防の基本は「保湿ケア」です。バリア機能を保ち守るための正しいスキンケア習慣を身につけましょう。日常生活において、皮膚のバリア機能を正常に保つために気をつけることは、「皮膚のバリア機能を傷つけない」「生活習慣の見直し」「こまめな保湿」です。

皮膚のバリア機能を傷つけない工夫

皮膚のバリア機能は、さまざまな外的刺激によるダメージを受けます。例えば、皮膚を強い紫外線に長時間さらしたり、乾燥したエアコンの風や外気にさらしたりすることで角質層が傷つき、バリア機能が低下します。日ざしの強い日の外出には、帽子や日傘を活用して紫外線によるダメージを防いだり、あるいは冬場には防寒着や手袋、マフラーなどを活用したりして、冷たく乾燥した外気によるダメージを防ぐなどの工夫が大切です。

毎日の入浴にも工夫が必要です。洗浄力の強い石鹸・ボディソープによる皮脂の洗いすぎや、ナイロン製のボディタオルやスクラブ剤による身体のこすりすぎなどは、皮膚表面の皮脂膜や角層を傷つけてバリア機能を破壊し、乾燥肌によるかゆみを引き起こすため、避けましょう。

入浴や洗顔の時には、皮膚にやさしい洗浄成分の石鹸・ボディソープを使用し、皮脂と皮膚の潤いを守りましょう。手のひらでよく泡立ててから、泡でやさしく包むようにして洗うと皮膚への負担を軽減できます。

生活習慣の見直し

皮膚の健康状態は日々の睡眠リズム・食生活・運動習慣の影響を受けます。日々の睡眠・食生活・運動習慣を見直しましょう。まず、基本となるのが充分な睡眠です。睡眠をとることで、紫外線などの外的刺激によるダメージを受けた皮膚の細胞修復が進みます。夜更かしや睡眠不足が続くと、皮膚の修復が追いつかず、バリア機能を保てなくなるため、注意しましょう。

規則正しい食生活も大切です。特に皮膚の修復には、タンパク質やビタミン・ミネラル類が必要ですが、現代人はこれらの栄養素が不足しがちです。肉などの主菜と野菜を使った副菜が揃ったバランスのよい食事を心がけ、栄養素をしっかり摂取しましょう。

保湿

乾燥肌によるかゆみを防ぐためには、こまめな保湿ケアで皮膚のバリア機能を補うこともとても大切です。手洗いや水仕事のあと、入浴・洗顔後はもちろん、乾燥が気になる際は保湿剤を塗って保湿ケアをしましょう。

特に、入浴・洗顔後、手洗い後は皮膚が潤っているように見えますが、そのまま放置していると、どんどん皮膚から水分が抜け出て乾燥が進みます。清潔なタオルで水分をやさしく拭き取ったら、皮膚表面が乾ききらないうちに、すぐに保湿剤を塗り、乾燥から皮膚を守りましょう。

乾燥肌に用いる主な保湿剤

ワセリン(油脂性軟膏)

皮膚の中の水分を保持し、皮膚を保護する作用がある保湿剤です。低刺激性で保湿力は高いが、ややべたつき感があります。

尿素(クリーム・乳液タイプのローション)

保湿効果が高く、使用感も良好です。ただし、やや刺激性があるため炎症のある部位には使用できません。

セラミド

角質に含まれる天然の潤い成分(角質細胞間脂質)です。皮膚から水分が逃げるのを防ぐとともに、皮膚を保護する作用があります。

まとめ

虫刺されや湿疹がある訳ではないのに、皮膚にかゆみの症状が現れる場合は、その背景に皮膚のバリア機能の低下を伴う「乾燥肌」が関係していることがほとんどです。皮膚の不快なかゆみ症状を改善するためには、日々の正しいスキンケア習慣でバリア機能を正常に保ち、乾燥肌を防ぐことが大切です。

皮膚のかゆみが乾燥肌によって生じている場合は、正しいスキンケアを続けることによって症状はほとんど改善します。ただし、かゆみ症状が強い場合や症状が長引いている場合は、医療機関を受診して医師に相談しましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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