ステロイド外用剤にはどのような種類がありますか?

ステロイド外用剤にはどんな種類があるの?

ステロイド外用剤とは?

みなさんは「ステロイド外用剤」について、どんな印象をお持ちでしょうか。
「かゆみや炎症がすぐにしっかり治る」といったメリットから「副作用が怖い」といったデメリットまで、ステロイド外用剤にまつわるさまざまな噂を耳にしていることと思います。
薬に関していろいろな情報があふれている今だからこそ、正しく理解して上手に付き合っていくことが必要ではないでしょうか。

さて、そんなステロイド外用剤ですが、薬効成分としてステロイド(合成副腎皮質ホルモン)という薬効成分を配合した湿疹・皮膚炎の治療などに用いられる薬のことをいいます。副腎皮質ホルモンとは、体内の副腎で、コレステロールからつくられるホルモンのことです。

コレステロールからつくられるホルモンは、ステロイド骨格と呼ばれる共通の骨格を持つため、ステロイドホルモンとも呼ばれます。副腎皮質ホルモンは、糖や蛋白質などのさまざまな代謝を調整する働きに加え、もう一つ大切な役割を担っています。
それは、炎症を起こすタンパク質の生産を抑えつつ、炎症を抑えるタンパク質を生む働きです。
つまり、副腎皮質ホルモンのおかげで、炎症の流れを食い止めることができるわけです。

ステロイド外用剤の強さのランクについて

ひとくちに「ステロイド外用剤」といっても、その種類はさまざまです。
もともと、ステロイド外用剤の効き方にはかなり大きな個人差があるといわれていますが、薬自体もその種類の差によって、強弱がランクで分けられています。

日本皮膚科学会の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン』(2018)では、医療用ステロイド外用剤の強さを、軟膏を基準とし、ステロイド成分そのものの強弱ではなく、製品の臨床効果として、以下5段階に分けています。

1. 最も強い(ストロンゲスト)
2. 非常に強い(ベリーストロング)
3. 強い(ストロング)
4. おだやか(マイルド)
5. 弱い(ウィーク)

なお、薬局で購入できるOTC医薬品では、3:強い(ストロング)、4:おだやか(マイルド)、5:弱い(ウィーク)の3ランクがあります。
OTC医薬品は、医療用と比べて濃度を下げているものもあるため、必ずしも上記ランクと同じではありませんが、製品を選択する際の目安として使われています。

症状によるステロイド外用剤の選択方法

それでは、実際にどのように薬を選んだらよいのか、もう少し具体的にみていきましょう。
「セルフメディケーション」の観点から、薬局でも購入できるものから紹介していますので、参考にしてください。
薬局で購入できる3ランクのOTC医薬品については、主に以下の2つに大分できると考えてよいでしょう。

ストロングランク:強い(ストロング)

皮膚が赤く炎症を起こしてかゆみが強い、など症状が比較的重い場合に使用

マイルドランク:おだやか(マイルド)、弱い(ウィーク)

症状が軽い場合やデリケートな部位、子どもや乳幼児などに使用

多くの方が誤解されていることの一つに、副作用が怖いから「ステロイド外用剤は、弱いレベルのものから使っていく」というものがあります。
ところがこれは大きな間違いです。効き目が不充分な薬を使い続けることでかき壊してしまい、かえって症状を悪化させたり、慢性化させたりする恐れもあるのです。

湿疹・皮膚炎の治療では、かき壊しによる症状の悪化を防ぐため、最初から症状を抑えることに重点をおいた薬選び、すなわち、充分な効果を期待できる強さの薬から使います。症状がひどい場合には、医師の診察を受けましょう。病院では上記の薬に加え、医療用医薬品として以下の薬も使われます。

非常に強い(ベリーストロング)

慢性的な炎症が治らない場合、急性の炎症を迅速に阻止する場合に使用
病院では使用頻度が高い

最も強い(ストロンゲスト)

炎症の度合いがたいへんひどい場合、手足の難治性湿疹など

剤形によるステロイド外用剤の選択方法

ステロイド外用剤には、同じ薬であっても軟膏、クリーム、ローション、スプレー、ジェルといったさまざまな種類があります。
それぞれ、皮膚への吸収率が異なりますので、実際に使用する前には患部に適した判断が必要になります。
ステロイド外用剤は剤形を意識することによって、選択の幅が広がります。以下に、剤形ごとの特徴と選ぶポイントをご紹介しましょう。

軟膏

一般的に使用する薬です。刺激が少なく、患部を保護する作用があります。乾燥した患部、湿潤した患部の両方に使用が可能です。塗布する部位を限定しない汎用性がありますが、べたつき感があります。保湿作用もありますが、保湿剤として使用してはいけません。

クリーム

伸びがよく使用感がよいので、軟膏のべたつきを避けたい方などには、この形状が選ばれたりします。若干の刺激性があります。乾燥した患部に適しています。

ローション

軟膏やクリームを使用しにくい頭髪部などに適しています。湿潤した患部には向いていません。若干の刺激性があります。

スプレー

軟膏やクリームを使用しにくい頭髪部などに適しています。手を汚さず広範囲に使用できるのが便利な点です。ただし、使用量がわかりにくく正常な皮膚にも散布する危険性もあります。

ジェル

炎症部位がかさついている場合や、脂漏性(しろうせい)皮膚炎に適しています。湿潤した病巣には向いていません。若干の刺激性があります。ステロイド外用剤は症状や使用部位に合わせて、ふさわしい薬選びをおこないましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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