赤ちゃん・子どもの『あせも』対策と予防法


汗ばむ季節の皮膚トラブルといえば「あせも」。赤ちゃんや子どもは汗をかきやすく、皮膚もデリケートなため、ケアを怠ると赤みやかゆみなどのあせもの症状が出ることがあります。赤ちゃん・子どもにあせもができてしまった場合の正しいケア方法をはじめ、あせもの予防方法を解説します。

赤ちゃん・子どものあせもの特徴

あせもは、医学的には「汗疹(かんしん)」と呼ばれ、汗をたくさんかくことによって汗の出口「汗管(かんかん)」に汗がたまり、皮膚表面に透明のプツプツや赤み、かゆみが出る皮膚トラブルです。あせもは大人にもできることがありますが、赤ちゃん・子どものほうができやすく、とくに高温多湿の季節にたくさん汗をかいた後、急に症状が出るのが特徴です。

赤ちゃん・子どもにあせもができやすい理由

赤ちゃん・子どもにあせもができやすい理由は二つあります。一つ目は、大人に比べて、赤ちゃん・子どもは身体の表面積は小さいものの、汗を作る「汗腺(かんせん)」と汗管の数は大人と同じで、たくさん汗をかきやすいことです。小さい子どもの場合は、代謝が盛んなため、一度にたくさんの汗をかくことによって皮膚トラブルを起こす機会が多くなります。

もう一つの理由は、大人に比べて皮膚がデリケートで、汚れや汗の成分による刺激に弱く、皮膚トラブルを起こしやすいことです。赤ちゃん・子どもの場合、軽度のあせもでも違和感を覚え、患部を掻き壊してしまって悪化させやすいのも特徴です。

あせもに似た皮膚トラブルに、「汗かぶれ」と呼ばれるものがあります。汗かぶれは、接触皮膚炎(せっしょくひふえん)の一種で、かいた汗に含まれる尿酸やアンモニアによる刺激や蒸れ、擦れなどの物理的刺激に皮膚がまけて、いわゆるかぶれを起こす皮膚トラブルです。皮膚のバリア機能が弱く、デリケートな赤ちゃん・子どもは、この汗かぶれにもなりやすいので注意が必要です。


赤ちゃん・子どものあせもの原因

赤ちゃん・子どもにあせもができる原因やあせもができやすい部位について詳しく見ていきましょう。

赤ちゃん・子どものあせもができやすい部位


あせもができやすいのは、汗腺が密集して汗をかきやすい部位です。赤ちゃんの場合は、とくにひじ・ひざ関節の内側部分や首筋などあせもができやすくなります。その他、寝具やベビーカのクッションで圧迫されて蒸れやすい後頭部、背中などもあせもができやすい部位です。

おむつをはいている赤ちゃんは、おむつで覆われた部分も蒸れて汗をかきやすいため、あせもがよくできます。子どもの場合は、激しい運動や野外での遊びで大量の汗をかきやすく、その汗がたまって蒸れやすい首まわりやひじ、ひざの内側、ウエストまわりなどにあせもができやすくなります。

赤ちゃん・子どもがなりやすいあせもの種類と原因

赤ちゃん・子どもがなりやすいあせもの種類は、主に水晶様汗疹と、紅色汗疹の二つです。この2種類の汗疹は、共に“汗の出口と呼ばれる「汗管」が詰まって起きる皮膚トラブル”ですが、汗の詰まりが起きる深さが異なります。

  • 水晶様汗疹(すいしょうようかんしん:白いあせも)
    水晶様汗疹(白いあせも)は、皮膚の最も浅いところで汗が詰まることによって起きるごく軽度のあせもです。直径数mmの透きとおった小さな水ぶくれがポツポツとできるだけで、炎症によるかゆみはありません。皮膚が赤くなることもないため、「白いあせも」と呼ばれています。
  • 紅色汗疹(こうしょくかんしん:赤いあせも)
    紅色汗疹(赤いあせも)は、皮膚のやや深いところで汗が詰まることによって起きるあせもです。1~2mm程度のブツブツした発疹ができます。炎症による赤みを伴うため、「赤いあせも」とも呼ばれることもあります。ヒリヒリした痛みや強いかゆみがあり、掻き壊すと悪化します。

その他、あせもだと思っていたら、汗や薬品、繊維の刺激などに対するかぶれ(接触皮膚炎:せっしょくひふえん)が原因になっていることや、アトピー性皮膚炎が原因になって、あせものような症状が出ているケースもあります。

特にアトピー性皮膚炎では汗がたまり易い部位に湿疹が生ずるので、アトピー性皮膚炎の湿疹をあせもと呼んでいる人が多いです。赤ちゃん・子どもの場合、あせもとその他の疾患との見分けつきにくいため、心配な時は医師に相談しましょう。

赤ちゃん・子どものあせも対策と予防方法

あせもになってしまうと、一日中不快感が続くため、赤ちゃん・子どもが不機嫌になることもあります。あせもの予防方法、あせもの症状が出てしまった場合でも早くきれいに治す方法を知っておきましょう。

予防法

あせもを予防するためには、日々のスキンケアが重要です。赤ちゃん・子どもが汗をかいたら濡れタオルでやさしくふきとってあげたり、こまめに着替え(赤ちゃんの場合はおむつ替え)をしたりして、皮膚を清潔に保ちましょう。入浴時には、よく泡立てた石鹸で身体を包むようにやさしく洗い、洗い残しがないようにしっかりとすすぎましょう。

その他、住環境にも工夫が必要です。赤ちゃん・子どもの皮膚に触れる寝具や衣服は、通気性がよく、柔らかい素材を選び、肌へのストレスを減らしましょう。体温調節が苦手な赤ちゃん・子どもは、高温多湿の部屋で過ごしていると、たくさん汗をかくため、あせもになりやすくなります。エアコンや除湿器を使って、快適に過ごせるように環境を整えてください。

あせもができてしまったら

あせもの治療はスキンケアが中心です。とくに水晶様汗疹(白いあせも)は、正しいスキンケアを続けていれば自然とよくなります。住環境や衣服を工夫して皮膚を清潔に保ちましょう。ただし、赤みやかゆみを伴う紅色汗疹(赤いあせも)の場合は、患部に炎症が起きている状態です。赤ちゃん・子どもが自分で掻いてしまうと、皮膚が傷ついて悪化してしまう恐れがあるため、適切な治療をすることが大切です。充分な強さのステロイド外用剤を塗ってすみやかに炎症を抑えましょう。

病院に行く目安

一度治ったにもかかわらず、同じような症状を繰り返す場合は、アトピーなど別の病気の場合もあります。同じような症状を繰り返したり、悪化したりしている時は、皮膚科専門医に相談しましょう。

月齢の小さな赤ちゃんの場合は、あせも症状の原因が判断しにくく、市販薬での治療はできません。あせものような症状が出たら、小児科や皮膚科を受診し、医師の指導を受けましょう。

はじめての「ステロイド外用剤」5つのポイント

(1)赤ちゃんや子ども向けのステロイド外用剤を選ぶ

「効き目が強い」という印象が強いステロイド外用剤ですが、「赤ちゃん用」「子ども用」もあります。ドラッグストアで購入できるステロイド外用剤には、以下のように成分の強さのランクがあります。

もともと皮膚が薄く、バリア機能が未熟な赤ちゃんや子どもは、大人と比べて成分が肌によく浸透します。ですから、大人よりもランクを落とした薬を使用しても、効果が発揮できます。

(2)少なすぎると効果が薄れるので、適量を使う

「効き目が強い」という印象から、少なめに使う方もいますが、適量を使わないと充分な効き目を得られず逆効果になることも。「大人の手のひら2枚くらいの広さに対して、約0.5g(口径5mmのチューブの場合、大人の人差し指の第一関節の長さくらい)」を目安に、患部の広さと比較して使用量を決めましょう。※製品によって口径はさまざまです。5gチューブなど口径が小さい場合は多めに出すなど調整してください。

なお患部が広範囲の場合は、使用する前に医師に相談しましょう。

(3)塗りはじめは1日2~3回

1日に2~3回、症状の状態を見ながら塗りましょう。主なタイミングは、朝夕の2回と夜は入浴後がおすすめです。症状がよくなってきたら、回数を減らしていきます。予防薬としては使わないよう注意してください。

(4)顔、首、陰部など皮膚の薄い部位は、使用期間に注意

ステロイド外用剤の皮膚への浸透率は、塗る部位によって大きく異なります。同じステロイド外用剤であっても、手のひらや足と比較して、顔・首・陰部など効果が出やすくなります。部位によって薬を使い分ける必要はとくにありませんが、皮膚の薄い部位ほど短期の使用を心がけましょう。

(5)1週間たっても効果がなければ、病院へ

ステロイド外用剤を適切に使用すれば、通常5~6日以内に症状は改善します。それでも改善しない、あるいは悪化する場合は、他の原因や疾患の程度がセルフメディケーションの範囲を超えていることが考えられるので、すぐに医師に診てもらいましょう。

監修

帝京大学医学部皮膚科 名誉教授

渡辺晋一先生

1952年生まれ、山梨県出身。アトピー性皮膚炎治療・皮膚真菌症研究のスペシャリスト。その他湿疹・皮膚炎群や感染症、膠原病、良性・悪性腫瘍などにも詳しい。東京大学医学部卒業後、同大皮膚科医局長などを務め、85年より米国ハーバード大マサチューセッツ総合病院皮膚科へ留学。98年、帝京大学医学部皮膚科主任教授。2017年、帝京大学名誉教授。帝京大学医真菌研究センター特任教授。2019年、『学会では教えてくれない アトピー性皮膚炎の正しい治療法(日本医事新報社)』、2022年『間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療(文光社)』を執筆。

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