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なぜ水虫などにはステロイド外用剤を使えないの?

なぜ水虫などにはステロイド外用剤を使えないの?

ステロイド外用剤は炎症を抑える効果の高い薬です。しかし、かゆみや赤みといった炎症症状があっても、ステロイド外用剤を使えない場合があります。

ステロイド外用剤が使えるものと使えないもの、その違いはどこにあるのでしょうか。ステロイド外用剤の特徴を踏まえながら、探っていってみましょう。

ステロイド外用剤が効く仕組みとは?

まずは、湿疹・皮膚炎とステロイド外用剤についておさらいしましょう。

私たちの身体には、さまざまな刺激に対する防御反応として「免疫システム」が備わっています。普段は身体を守ってくれる免疫システムが過剰に働くと「炎症」が起き、皮膚が赤くなる、腫れる、かゆくなる、痛むなどの湿疹・皮膚炎の症状があらわれます。

ステロイド外用剤には、免疫システムの過剰な働きを抑えて次の炎症を起こさせない「免疫抑制作用」と、いま起きている炎症を抑える「抗炎症作用」があるため、湿疹・皮膚炎にとてもよく効くのです。

炎症が起こると、ヒスタミンなどのかゆみ物質も出現してくるため、かゆみが伴うことが多いのですが、炎症そのものを抑えることでかゆみ物質も出現しなくなり、つらいかゆみが消えていきます。

ステロイド外用剤には、ほかに「血管収縮作用」「細胞増殖抑制作用」などもあり、これらが総合的に働いて炎症を抑えます。

主婦湿疹(手湿疹)、あせも、虫刺され、じんましんは、何らかの刺激を受けたことにより免疫細胞が活性化し、炎症を起こす物質を分泌したり放出したりした結果起こる炎症の一部です。ですからステロイド外用剤が効くのです。

しかし、皮膚の赤みやかゆみなどの炎症症状があっても、ステロイド外用剤が使えない場合があります。

ステロイド外用剤の使えない場合とは?

ステロイド外用剤のもつ免疫抑制作用が、かえって症状を悪化させてしまう場合があるのです。それは皮膚感染症です。

感染症とは、病原体の感染によって起こる病気です。私たちの身体は、病原体が入り込むと、免疫システムを駆使してその病原体を殺し、身体を守ろうとします。赤くなって腫れたり、かゆくなったりする炎症症状は、その場所で免疫細胞が病原体と闘っている証拠なのです。

そこに免疫抑制作用のあるステロイド外用剤を塗ると、免疫細胞の力が弱まり、病原体に対抗する力が失われてしまいます。そのため病原体の増殖を止められなくなり、皮膚感染症の症状が悪化してしまうというわけです。

皮膚感染症は、病原体の種類によって、主に真菌(カビ)性、細菌性、ウイルス性の3つに分けられます。

種類 代表例 治療薬
真菌(カビ)性 水虫、タムシ、カンジダ症など 真抗菌剤
細菌性 とびひ(伝染性膿痂疹(のうかしん))、毛のう炎(ニキビを含む)、めんちょうなど 抗菌剤
ウイルス性 単純ヘルペス、帯状疱疹など 抗ウイルス剤

※抗真菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤をまとめて抗生物質と呼ぶこともあります。

皮膚感染症を治すためには、これらの病原体の増殖を抑えなくてはなりません。

例えば水虫は白癬菌という真菌(カビ)による皮膚感染症ですが、治療には抗真菌剤を用います。抗真菌剤は、真菌の成育や、真菌を形づくっている膜(細胞膜)の合成を阻害するなどして効果を発揮します。抗真菌剤の効果と、もともと私たちの身体に備わる免疫システムの働きによって、病原体である真菌は死んでしまうのです。

皮膚感染症は、炎症だけを抑えても治りません。病原体の増殖を抑え、殺すことではじめて根本的な治療ができるのです。

ステロイド外用剤が使えない皮膚感染症の症状

真菌性の皮膚感染症

  • 水虫(足白癬)
    原因:白癬菌
    症状と特徴:
    かゆみ、小さなブツブツ、皮がむける、ジュクジュクする、足の裏の角質が固くなる、かさぶたができるなど。爪の中に白癬菌が入り込むと、爪が白く濁ったり分厚くなってポロポロとくずれる爪水虫(爪白癬)になります。爪水虫は足の爪にできることが多いようです。
    白癬菌は高温多湿の環境で増殖するため、夏になると症状が悪化します。白癬菌は皮膚の角質の成分であるケラチンが好物なので、角質の厚い足にできることが多いのです。
    治療:
    抗真菌剤の塗り薬や内服薬。再発しやすいため、症状が改善しても、菌を排除するまで長期(2~3か月)で、しっかりと治療することが大切です。
  • ゼニタムシ(体部白癬)
    原因:白癬菌
    症状と特徴:
    身体に小さな赤い輪ができ、徐々に広がっていきます。かゆみが伴うこともあります。水虫と同じ白癬菌が原因ですが、ゼニタムシは皮膚の薄いところにできやすいのが特徴です。ゼニタムシのある人は水虫もあることが多く、両方をしっかり治療しないと再発を繰り返してしまいます。最近は猫や犬などのペットから感染する人も増えています。
    治療:
    抗真菌剤の塗り薬。水虫よりは長引かないことが多いようです。
  • カンジダ症
    原因:カンジダ菌
    症状と特徴:
    手にできると、皮膚の表面がガサガサになったり、指の間の皮膚がむけたりします。爪の場合は爪の根元が白く変色します。赤ちゃんの陰部でカンジダ菌が増殖すると、おむつかぶれに似た症状があらわれますが、おむつかぶれの治療では治らないので、きちんと見分けることが重要です(関連記事)。また、口の中や唇、性器などにも生じます。
    カンジダ菌は体表、消化管、口の中、膣などに普通に成育していて、通常は人体に悪影響を及ぼさないものですが、身体の抵抗力が弱っているときなどに感染しやすくなります。また、再発しやすいのも特徴です。
    治療:
    抗真菌剤の塗り薬や内服薬、座薬。女性の性器(腟)カンジダ症では腟錠も用います。

細菌性の皮膚感染症

  • とびひ(伝染性膿痂疹)
    原因:
    (1)水泡性のとびひ:黄色ブドウ球菌
    (2)痂皮性のとびひ:A群B溶血性連鎖球菌
    症状と特徴:
    (1)水泡性のとびひ:湿疹などを掻き壊してただれたところに黄色ブドウ球菌が感染して増殖し、かゆみを伴う小さな水ぶくれができて周囲が赤くなります。水ぶくれの中身ははじめ透明な液体ですが、だんだん膿になってきます。水ぶくれがやぶれると、しみ出した液体や膿みによって周囲の皮膚へ広がっていきます。
    (2)痂皮性のとびひ:赤く腫れたところに、膿を含んだ小さな水泡(膿泡)やただれが生じ、厚いかたぶた(痂皮)ができます。炎症が強く、痛みを伴い、ときに発熱やリンパ節の腫れなど全身的な症状があらわれることもあります。
    治療:
    抗菌剤の塗り薬。症状が強い場合は抗菌剤の内服薬や注射薬も使用します。
  • 毛のう炎(毛包炎)(※にきびを含む)
    原因:黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌など
    症状と特徴:
    毛穴の根元にある毛のうという部分に原因となる細菌が入り込み、炎症を起こすと毛のう炎という赤いブツブツができます。顔にできた毛のう炎が悪化して化膿し、大きくなったものを俗にめんちょうというようです。
    治療:
    肌を清潔に保つスキンケアと、抗菌剤の塗り薬や内服薬。

ウイルス性の皮膚感染症

  • 単純性ヘルペス
    原因:単純ヘルペスウイルス
    症状と特徴:
    皮膚や粘膜に小さな水泡ができてただれます。かゆみや痛みを伴うこともあります。身体のどこにでもでき、口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、顔面ヘルペス、角膜ヘルペス、性器ヘルペス、ヘルペス性ひょう疽(手指にできたもの)、臀部ヘルペス、ヘルペス性脳炎など、できた場所によって病名がついています。
    治療:
    抗ウイルス剤の塗り薬、内服薬や注射薬。
  • 帯状疱疹
    原因:水痘・帯状疱疹ウイルス
    症状と特徴:
    皮膚に赤い発疹ができ、1~2日たった頃に小さな水泡が出現します。強い痛みを伴い、多くは水泡ができる前にチクチクとした痛みが出現します。
    帯状疱疹はみずぼうそう(水痘)と同じウイルスが原因です。水ぼうそうが治ったあともウイルスが神経節に潜んでいて、身体の抵抗力が弱ったときに再活性化して帯状疱疹を起こします。神経の走行にそって、身体の左右どちらかにできるのが特徴です。
    治療:
    抗ウイルス薬の内服や注射薬で全身的に治療するのが基本で、入院が必要なこともあります。痛みに対しては鎮痛剤も用いられます。

皮膚感染症は専門的な治療が必要です。かかりつけ医や皮膚科医に相談しましょう。

ステロイド外用剤を上手に使うために

病気の治療は、原因に対して行う根本治療と、症状に対して行う対症療法があります。

そういった意味では、ステロイド外用剤は、皮膚感染症の原因である真菌や細菌、ウイルスに対抗する作用はなく、皮膚感染症の根本治療には不向きです。抗生物質が皮膚感染症の治療の柱になります。

このように、薬は適材適所で使うことによって期待する効果を発揮してくれるものです。

用法や用量を守って賢く使えば、ステロイド外用剤のような効果の高い薬は私たちの健康にとても役立ってくれます。

薬の性格をよく知って、上手なセルフメディケーションに生かしましょう。

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