教えて薬剤師さん

旅行先での皮膚トラブル、どう対応する? 掲載日:2009年12月28日

旅行を楽しく過ごすには、体調が万全であることは欠かせません。しかし、旅行先では、思いもかけず皮膚トラブルなどの体調不良に見舞われるケースが多いものです。それも日本国内ならともかく、海外となると大変。日本と医療事情が異なるほか、衛生面や気候などの環境も違います。
海外旅行をうまく乗り切るために必要な、海外の医療事情、そしてやっかいな皮膚トラブルに対処するためのコツを解説します。

よくある旅行先での皮膚トラブルとは?
皮膚トラブルの原因は何?楽しいはずの旅行先で思わぬ体調不良に見舞われると、せっかくの思い出も台無しになってしまいます。とくに海外は気候や衛生環境が日本と異なるため、出発時には体調万全だったのが、現地で急に具合が悪くなるなんてことも。

そんな海外で遭遇しやすい体調不良の中で多いのが、皮膚炎や虫さされなどの皮膚トラブルです。

日本はおもに温帯湿潤気候に属しているため、秋から冬にかけての太平洋側地域をのぞき、湿度の高い国と言えます。しかし、海外には年間を通じてほとんど雨が降らないなど、極度に乾燥した地域もあります。

湿度が高い熱帯地域でも、公共の施設などでは必要以上にエアコンをきかせるなど、意外にも乾燥が強く、皮膚トラブルを起こしやすい環境だったりします。

また、旅行先として人気の高い南国のリゾート地では、紫外線の影響を受けるリスクが高まります。ビーチで強い日差しを浴び、肌が赤くなってヒリヒリしたり、ひどいときには、むくみや水ぶくれがあらわれることもあります。南国に限らず、標高の高い地域も紫外線には要注意です。とくに雪山では、紫外線の反射などによる照り返しが強く、油断は禁物です。

ほかにも、リゾート地で肌を露出していて蚊やハチ・クラゲなどに刺されたり、足元に生えている草や葉っぱにかぶれる危険性もあります。(「かぶれ」や「アレルギー反応」はなぜ起きる?」を参照)
ビーチの砂は塩分で殺菌されているため比較的安全ですが、遊園地や公園にある砂場や、砂漠などの砂を触ると、寄生虫やノミの一種である砂ノミに狙われ、肌が腫れあがるなどの症状を引き起こすこともあります。
海外と日本でこんなに違う、お薬事情
もちろん、旅行中はこうした皮膚トラブルに遭遇しないことが一番ですが、ちょっとした油断から症状を引き起こしてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。

残念ながら、旅行先の国がすべて日本と同じような医療環境にあるとは言えません。国が変われば、お薬に関する事情も異なってきます。海外では、日本と同じような状況でお薬を購入することは難しいと考える方が良いでしょう。

まず、日本と海外ではお薬そのものに対する国の関わり方が違います。日本は「薬事法」と呼ばれる法律によってお薬が定義され、新しいお薬の認可にあたっては厳しい審査が課されています。つまり、日本は国がお薬の効能と安全性についてお墨付きを与えているわけですが、これは世界でも特殊なことなのです。

というのも、国によってはお薬の認可に対して比較的基準が緩いところもあり、そのため、安全とは言い切れないお薬も流通してしまっているのが現状です。患者さんは、自己責任という考え方を前提にお薬を購入せざるを得ません。こと新興国に関しては、必要なお薬でさえ購入できない地域もまだ多く存在しています。

日本には「医薬品副作用被害救済制度」という独自の制度も存在します。これは、患者さんが医療機関で処方されたお薬や薬局で購入した市販薬を正しく使用したにもかかわらず、副作用などの健康被害にあった場合、医療費の給付等を受けられるというものです。つまり、日本においては新しいお薬を流通させる前と、流通させた後の2段階において患者さんの安全を確保する環境が整っていると言えます。
海外で市販薬を購入する場合の問題点
前ページで紹介したように、海外は日本と比べ、お薬に関する制度が異なるのが現状です。そのため、旅行先で思わぬ皮膚トラブルを引き起こして薬局に走ったとしても、日本と同じ薬を、同じように安全な状況で購入できるとは限りません。

たとえば、日本で市販薬を購入する場合、副作用のリスクが高いお薬に関しては薬剤師が書面を用いて説明を行い、お薬の飲み方や副作用について情報提供を行うことが義務づけられています(「薬局ではどういう風に相談すればいいの?」を参照)。一方、海外では薬剤師などの専門家を置かずにお薬を販売している店舗も多く、十分な情報を得られないままお薬を買わざるを得ないケースも多いようです。

また、海外では日本と保険制度が異なり、医療機関での診療費が高い国もあります。こうした国では、日本ならば医療機関で処方されるようなお薬(処方薬)が、市販薬として街中で販売されている実態も見受けられます。これは、効き目は強いものの、副作用のリスクも高いお薬を簡単に購入出来るということですから、十分な知識がないと健康被害に遭うリスクは高くなってしまいます。

さらに新興国においては、必要なお薬そのものが不足していることもあります。そのため、認可されていないお薬が流通していたり、表示どおりの有効成分が含まれていないニセ薬が堂々と販売されている場合もあります。言葉が通じないなど、コミュニケーションが確実にとれない環境において、自己判断でお薬を購入するのは避けた方が賢明です。
いざ出発!何を準備すればいいの?
日本では簡単に購入できる市販薬でも、旅行先では入手できない・あるいは入手できたとしても安全は保障されないのが現状です。
海外旅行に行く前には、まず自分の健康状態をしっかり把握しましょう。そして、旅行先の衛生環境や、いざというときの医療事情について調べ、たとえ旅慣れた地域でも、期間が短期であってもお薬を持参するようにしましょう。

●海外旅行に持っていくべきアイテム

皮膚トラブル用

  • 皮膚炎・虫さされ用の塗り薬(ステロイド外用剤など)
    ※ステロイド外用剤の中には、細菌感染にも対応できる抗生物質が配合されたものもあり、便利です。
  • 虫よけスプレー
  • 蚊取り線香
  • 消毒薬(ヨード液、オキシドール液、アルコール液など)

その他

  • 解熱・鎮痛薬
  • 胃腸・整腸薬、下痢止め
  • 酔い止め薬
  • 風邪薬
  • 目薬etc.
海外旅行の際には、予期せぬトラブルで預けた荷物が到着しなかったり、紛失するといったことも想定されます。せっかく用意したお薬が使えないという事態を招かないよう、医療機関で処方されたお薬など、最低限必要なものは手荷物に入れて持ち運ぶと良いでしょう。

最近の空港では、手荷物検査が厳しくなっています。病気で治療中の患者さんが医療機関で処方されたお薬を持ち運ぶ場合、処方箋のコピーを持参したり、医師に処方薬の内容を記載した証明書を発行してもらうと良いでしょう。市販薬を手荷物に入れる場合は、それがお薬だとひと目で分かるよう、外箱に入れたままの状態で入れるのがおススメです。

最後に、旅行先で皮膚トラブルを避けるための工夫をご紹介します。面倒でも、こうした工夫を重ねることで旅行を快適に過ごし、楽しい思い出が出来るといいですね。

横着せず、正しい使用方法を守りましょう!

●皮膚トラブルを避けるためのポイント

  • リゾート地で外出の際は長袖や長ズボンなどを着用し、肌の露出を避ける
  • 蚊は黒い服に寄ってくるので、なるべく白地の服装を選ぶ
  • 肌が露出している部位には虫よけスプレーを塗る
  • ステロイド外用剤と日焼け止めは一緒に塗らない
    (化学反応の可能性があるため)

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